新型コロナウィルスによって、不要不急の外出はひかえるムードの世の中。妊娠中のママや子育て中のママたちも出来る限りひかえている方や、気を遣って行動するなど、今までの生活から変化を強いられていることでしょう。


しかし、妊娠出産育児中はただでさえ変化が大きくストレスがかかりやすい時期。そこにコロナによる変化がプラスされると…今回はママたちを襲う「うつ」について見ていきたいと思います。


この記事の目次


産前産後のママは「うつ」になりやすい


赤ちゃんの誕生は喜ばしいことです。そのため、出産はママの喜び!というイメージはありませんか?


もちろん、ママも嬉しいですよね。しかし、その一方で妊娠・出産・産後の身体や心生活の変化でママが疲弊するのも事実。


喜ぶどころか常にイライラしっぱなし、楽しいと思っていたマタニティライフや子育ての生活が楽しめない、と抑うつ状態に陥ることがあります。


そしてそれが続くと、生活に大きな支障をきたすことになってくるでしょう。この状態がいわゆる「うつ」なのです。


厚生労働省のe-ヘルスネットでは、以下のように書かれています。


うつ病はとてもよく起こる病気ですが、女性の場合約12人に1人が一生のうち一度はうつ病におちいります。女性は男性の2倍うつ病にかかりやすいのですが、一生の中でも妊娠中や産後はとりわけうつ病がよく起こります。

e-ヘルスネット「妊娠・出産に伴ううつ病の症状と治療」


12人に1人という数字。これは生涯で女性が乳がんにかかる割合や、子宮内膜症にかかる割合と同程度です。


日本では左利きはおよそ10人に1人AB型も10人に1人です。ALSは300人に1人新型コロナウィルスに感染した人は3846人に1人(2020年7月時点)ですので、12人に1人という数字は決して少なくはないのです。


上記では一部分のみ引用していますが、他にも心にストンと入ってくることが書かれていますので、今、妊娠出産・子育てが苦しい、と感じる人にはこの情報をまずは読んでほしい、と思います。


e-ヘルスネット「妊娠・出産に伴ううつ病の症状と治療」

 

産前産後の「うつ」は色々な呼び方がある


産前産後はうつになりやすいことから、その時のママの状態にあわせて呼び方があります。


マタニティブルー

マタニティ期・妊娠期に気分の落ち込みや漠然とした不安や悲しい気持ちに襲われることをマタニティブルーと呼びます。


出産した時に嬉しいと感じることができない、など出産直後から産後10日間程度までの抑うつ気分もマタニティブルーとして考えられています。


最近ではパパもマタニティブルーになるケースもあるそうです。


産後うつ

マタニティブルーは産後2週間ほどで自然とおさまると考えられていますが、それ以降も抑うつ気分が続く、さらに落ち込むことが増えた、という場合は産後うつが疑われます。


産後2週間~産後3ヶ月ごろに発症することが多いと考えられており、産褥期は身体のケア以外にも心のケアも必要な時期でしょう。


育児ノイローゼ

育児ノイローゼは育児によるストレスで、育児がつらい、イライラする、気分が落ち込むなど、というマタニティブルーや産後うつと同様に精神的に不安定な状況のこと。その状態が長引くことでうつになることも。


イヤイヤ期の2歳児を育児中のママや、ワンオペ育児をしているママに起こりやすいそうです。


産前産後に精神的に不安定になる理由


妊娠・出産・育児期に精神的に不安定になってしまうのは「ホルモンバランスの乱れ」「生活の変化」「身体の変化」「睡眠不足」「子供と二人で過ごす」「頼れる人がいない」などが考えられているそうです。


産前産後特有のママ自身に起こる身体の変化と、赤ちゃんが生まれることによる生活の変化は誰しもに起こります。そして変化を乗り切るための環境が整っていないと、より一層不安定になってしまうのかもしれません。


そして、うつが深刻化することで、自殺やネグレクトや虐待につながる可能性もあります。


コロナで出産・育児支援が受けられないというリスク


先述の通り、妊娠・出産・育児の間のママたちは、さまざまな変化によって心身のバランスを崩しがちになりやすい時期。


しかし、コロナによって生活様式が変化したことでさらなるストレスがママたちを襲っているのです。


コロナで地域支援が受けられない!

ベビーカレンダーと共同でコロナ禍に妊娠出産、生後半年未満の子育てをするママに調査をしたところ、新型コロナウイルスによる妊娠出産育児に関する予定の変更があったことがわかりました。


両親学級などの中止…66.96%

公的保育サービスが受けられなくなった…40.78%


東京・神奈川・千葉・埼玉にしぼってみると、公的保育サービスが受けられなくなったのが50.87%と半数にのぼります。


産前産後のママの負担を軽減すべく地域が取り組んでいる、子育て支援事業やみまもり事業がコロナによってママに届きにくくなる、もしくはママも頼りにくい状況が生じているようです。


コロナで孤育てに拍車!?ママたちが感じるリスク

また、コロナによって今後被害や影響があると思うものを、7段階評価(7…非常にあり得る~1…全くありえない)してもらったところ、東京・神奈川・千葉・埼玉のママたちは他の地域よりも


「家族などから育児・出産サポートが受けられない」

「施設や公共機関での育児・出産サポートが受けられない」


の数値が高く、不安の高さがうかがえます。



こういった不安を持ちながらの生活は、いつも以上に疲弊してしまいますね。


首都圏に住んでいる筆者がコロナ禍で感じたこと


結婚を機に上京した筆者は未就学児を2人抱えて、首都圏にて核家族で生活しています。実家は新幹線で2時間以上、義実家に至っては飛行機で帰る距離です。夫は激務のためワンオペ育児。


コロナ前から疲弊しきった生活、ギリギリのところでなんとか過ごしてたところにコロナによるさまざまな制限と変化が起こりました。


緊急事態宣言中は夫が定時帰宅・休日出勤なしだった

コロナで緊急事態宣言になり、保育園が休園、解除後の今(2020年7月現在)も分散登園が続いています。


家庭保育をしながらの仕事も大変でしたが、それよりも天気のいい日におでかけに行けないことがストレスでした。


ただ、この間は通勤をしていた夫もこどものお風呂の時間までに帰宅。それまでのワンオペ風呂から逃れることができた分、ストレスは爆発しませんでしたが、少しずつ溜まっていっている感じでした。


緊急事態宣言解除後の生活がさらにストレスを

緊急事態宣言が解除され、保育園に行けるようになったとしても、まだまだ分散登園。フルタイムで預けるのには程遠い状況です。しかし、夫は終電近くまで残業、休日出勤に元通り


さらには国内の飛行機を使った出張まで。6月に2回、7月に1回です。


そして夫の会社でコロナの陽性の方が。夫と同じフロア勤務だったため、もしかすると濃厚接触者?!というパニックにもなり、保健所からの連絡が来るまでは自宅待機。


早々に帰ってきても、家事育児ができないどころか、子供と隔離せねばならず、お父さんが家にいるのに遊んでもらえないどころか同じ部屋にも入れない子供たちは、ドアの前で「おとうさんーー」と大号泣。


保育園の負担、仕事の減少、両親や親せきに頼れない、外出が思うようにできない、などコロナによる変化の負担が一気に筆者にのしかかり、正直、もう限界でした…。


ママの疲労困憊は家庭の緊急事態!不要不急じゃない!

おそらく、首都圏に住む核家族のママたちは大なり小なり似たようなハプニングの連続で、頭を悩ませる日々だと思います。


筆者はコロナで延期になっていた子供の定期健診での、臨床心理士さんとの相談で


「コロナで大変な時だけど、ご家庭が緊急事態です。不要不急ではなく、必要で迅速な対応が求められることですので、ママが改善するために取り組もうとしていることをためらわず実行してください。そして何かあればいつでもできる限りで支援します」


という メッセージに勇気づけられました。


ママの心と体がつらい時は、どうか少しでも気分が落ち着く手段を選びとるようにしてください。



生きづらい・頼りづらい世の中でSOSの声をあげる勇気


うつ、と聞くと「まだそんな状態じゃない、私は頑張れる」というママが多いのではないでしょうか。もしくは「うつだったら、迷惑をかけてしまう」と他人を思ったり、「ママ失格かも」と自分を責めたりしているママもいらっしゃるかもしれません。


しかしそのような状況なら、私はどれもSOSをあげるタイミングだと思っています。


もしかするとちょっと落ち込みやすい、で済むかもしれませんし、それで済むことにこしたことはないでしょう。子供がかわいいと思えない、という気持ちや抑うつ状態が続くことは、ママ自身はもちろん、子供にも家族にもいいことではないからです。


コロナの影響はもちろんのこと、出産は喜ばしいことという側面がある分、SOSを出しにくいかもしれません。そのため、勇気のいることですが、「孤育て」が最悪のケースにならないためにも声をあげることをどうかためらわないでください。


うつは耐え忍ぶことではなく、正しく知って正しく対処することが大切です。うつになる女性は12人に1人です。


選択肢は限りあるかもしれませんが、どうすればママが休めて、気持ちが前向きになるかを、まずはママ自身が大切にしてあげてください。そしてパパはもちろんのこと、ママを取り巻く環境や社会もそうであってほしいと願うばかりです。


参考文献
総務省「人口推計 2020年7月報」

「カラダノート、筑波大学人文社会系 松島みどり准教授に調査協力全国を対象にコロナ禍における妊産婦の心身の変化を調査」

日本産婦人科医会「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル~産後ケアへの切れ目のない支援に向けて~」


 (Photo by:写真AC