
母乳育児について、あなたはどんな思いを抱えていますか?「もっと出た方がいいのかな」「このままで大丈夫?」「周りの目が気になる…」。そんな不安や悩みを抱えている方は少なくないはず。
今回は、母乳育児の国際認定資格を持ちながら、「楽しく育児ができること」を大切にする現役助産師のマツさん(@matsu_josanshi/)に、母乳育児についての本音を語っていただきました。
900人しかいない国際資格保持者が、あえて"完全母乳育児だけ"をすすめない理由

マツさんは、12年のキャリアを持つ現役の助産師です。
看護師、保健師、アドバンス助産師などの資格に加え、母乳育児に関する国際認定資格など、実に7つ以上もの専門資格を持つエキスパートです。しかし、その豊富な知識と経験を持ちながら、マツさんはあえて「母乳育児だけ」を推奨しないと言います。
「母乳育児の国際資格を持っているので、バリバリの母乳信者だと思われることも多いんです。実際、そういう考えの専門家も多いと思います。でも私は、ママが好きなように授乳してほしいと思っています」 そう語るマツさんですが、なぜ母乳育児の資格を取得したのでしょうか。
「母乳がたくさん出ることで、選択肢が広がるんです。母乳が出なければミルクしか選べませんが、母乳が希望する量出るようになれば、完全母乳で育てるのか、ミルクと併用するのか、ママが自分で選択できるようになります。だから私は、母乳育児の専門的な知識を身につけたかったんです」
母乳育児のプロが実践する"楽しい育児"という考え方

マツさんは2児の母でもあります。現在3歳半の女の子と8ヶ月の男の子を育てながら、SNSでの情報発信や、産後ケアの相談など、精力的に活動を続けています。そんなマツさんも、第1子の育児では戸惑うことが多かったと言います。
「助産師とはいえ、1人目の時は本当に知らないことばかりでした。助産師は専門家として1ヶ月健診までの赤ちゃんについては詳しいのですが、その後の育児については、実は私たちも一般のママと同じように手探りなことも多いんです」
この経験から、マツさんは「正しい」育児よりも「楽しい」育児を重視するようになりました。
「私自身、2人目は気持ちに余裕を持って楽しく育児ができています。これは1人目での経験があるからというだけでなく、『楽しいほうがいい』という考え方に変わったからだと思います」
母乳育児に関する最新の研究と、変わりゆく常識

母乳育児に関する研究は、実は毎年のように更新されています。マツさんは、最新の知見を学ぶため、毎月のように勉強会に参加しているそうです。
「特に母乳に関する研究は、数年前の常識が今では変わっていることも多いんです。でも残念ながら、その情報がすべての医療従事者に行き渡っているわけではありません」 そのため、古い知識のまま指導されて困っている方も少なくないとか。
マツさんのSNSには、そういった方々からの相談も多く寄せられているそうです。
「医療従事者の中でも、母乳育児に関する考え方には幅があります。中には『母乳でないとダメ』という強い信念を持つ方もいます。でも、そういった硬直的な考え方は、かえってママたちを追い詰めてしまうことがあるんです」
専門家の立場から伝えたい、本当に大切なこと

ではマツさんは、母乳育児について何を大切にしているのでしょうか。
「母乳を頑張りたい人には、もちろんしっかりサポートします。でも、ミルクを足しながらやりたい人もいれば、完全にミルクにしたい人もいる。それぞれの選択を尊重したいんです」 そして、何より大切なのは「楽しく育児ができること」だとマツさんは強調します。
「母乳育児も育児の一部分です。それを頑張りすぎて育児全体が苦しくなってしまっては本末転倒です。赤ちゃんと過ごす時間が楽しいと感じられることが、何より大切だと思います」
母乳育児に悩むママたちへのメッセージ
マツさんは、母乳育児に悩むママたちに向けて、具体的なアドバイスを語ってくれました。
「母乳の量や回数、タイミングなど、正解を探そうとして悩んでしまう方が多いんです。でも、赤ちゃんの様子を見ながら、少しずつ自分に合ったやり方を見つけていけばいいんです」 そして、専門家への相談についても、こんなアドバイスをくれました。
「不安なことがあれば、ぜひ専門家に相談してください。でも時には、その専門家の意見が自分に合わないと感じることもあるかもしれません。その時は、別の専門家の意見を聞いてみることも大切です。専門家も人それぞれ個性があって、相性というものがあるんです」
おわりに
取材を通じて印象的だったのは、マツさんの「楽しく育児ができること」へのこだわりでした。母乳育児の国際資格を持つ専門家でありながら、「母乳でなければならない」という考えに縛られることなく、一人一人の状況に寄り添う姿勢が伝わってきました。
育児の方法は、十人十色。母乳育児もその選択肢の一つに過ぎません。大切なのは、あなたと赤ちゃんが心地よく過ごせる方法を見つけること。そのためにも、周りの声に振り回されすぎることなく、ゆっくりと自分たちのペースを作っていってほしいと思います。
マツさんは最後にこう語ってくれました。
「母乳育児は、決して完璧を目指すものではありません。あなたとお子さんにとって心地よい方法を、少しずつ見つけていってください。その過程も含めて、かけがえのない育児の時間になるはずです」
助産師マツさんのアカウントはこちらから→(@matsu_josanshi/)