「約10カ月お腹の中で大事な赤ちゃんを育ててきて、命がけで出産して、今も必死に子育てされているお母さんたちに対するリスペクトは絶対に忘れちゃいけないと思っています」

Instagramで子どもの発達について発信し、多くのママたちから支持を集める「あやこ先生」(ayako.sensei)。保育士として培った経験と、ママたちへの深い敬意をベースに、子育て支援の新しい形を提案しています。

いとこが9人もいるという環境で育ち、小さな子どもたちと関わる機会が自然と多かったあやこ先生。

中学・高校の頃には家庭科の授業で訪れた自分が通っていた幼稚園で、かつて自分を見てくれていた先生と再会し、子どもたちと関わる中で「子どもって可愛いな」という気持ちを強く感じ、そんな経験が保育の道へと進むきっかけとなったそうです。


ママの幸せが子どもの幸せにつながる

あやこ先生は元々地元の保育園で働いていましたが、組織の一員として届けられる支援に限界を感じて、もっと踏み込んだ支援がしたいという思いから独立を決意。幼児クラスの担任として活躍されていた時期もありましたが、より包括的な支援を提供したいという思いが強くなっていったそうです。

「保育現場で強く感じていたのは、お母さんが幸せそうに楽しく生きていると、それは全部お子さんに還元されていくということ。子どもたちの幸せを守ろうと思ったら、まず守らなければいけないのはお母さんの幸せなんです」

現在は地元でのベビーマッサージ教室とオンラインでの子育て支援講座を展開。幼い子どもを持つママたちが集まる場を作っています。

「産後の時期は変化が目まぐるしいんです。練習したこともない育児がいきなり本番でスタートする。長い目で見ても、子育て期の中でも特に支援が必要な時期です。『なんかあったら声かけてね』というレベルではなく、『すぐ隣にいるからいつでも連絡して』と言えるくらい、力強く伴走してくれる存在が必要なんですよね」


0歳にこだわる理由―もっとも支援が必要な時期

あやこ先生が0歳児の育児に特に注力されている理由は、この時期がママたちにとって最も大きな変化の時期だからです。

「出産してから子どもが1歳になるまでの1年間の変化は目まぐるしいんです。お母さんも産後のボロボロの体の中で、練習したこともない育児がいきなり本番でスタートします。長い目で見ても、やっぱり子育て期の中で最も支援が必要な時期だという思いがとても強いんです」

さらに、産後うつなどメンタルヘルスの課題に直面するママも少なくありません。あやこ先生は、そんな産後のママたちを誰一人取り残さないように、熱心にサポートを続けています。

「産後うつで苦しんでいるお母さんたちも何人もいますし、実際、中には産後うつで命を落としてしまう方だっているわけです。だからこそ、0歳育児をしているお母さんたちには、本当に力強くそばにいて伴走してくれる存在が必要なんです」


「悩みを忘れた」驚きの講座体験

あやこ先生が特に力を入れているのが、同じママたちが4ヶ月間一緒に学ぶグループ講座です。これまでの単発講座では物足りなさを感じていたことから生まれた取り組みです。

「単発の講座だと1回しか会えないから、そのお母さんの悩みにも1回しか関われないんです。こんなに悩んでいらっしゃるのに、その後どうなったのか分からないという、そのもどかしさがあって、もっと継続的な支援ができる形を作りたかったんですよ」

講座の内容はとても充実しています。


●週に一度のオンラインセッションでのベビーマッサージやふれあい遊び

●0歳育児中のママに絶対に知っておいてほしい知識を詰め込んだ講座(体の発達・心の発達・子ども一人一人が持つ感覚・離乳食についてなど)

●隔週の夜には、子どもが寝た後のママのおしゃべり会

●歯科衛生士、乳幼児睡眠コンサルタントなど、各分野の専門家による講義



このような多角的なアプローチによって、ママたちの悩みに総合的に対応しています。さらに、講座の中で出会ったママの中には、その後講師側として参加してくれる方も現れるなど、コミュニティが自然と広がっているそうです。

「子どもの成長とともに悩みの内容は変わるけど、悩みが無くなることはないのかもしれない。でも、自分の子育て軸を持つことや根拠ある知識を身につけることで、悩みはあるけど苦しんではいない、悩みはあるけどそこに囚われ日々の幸福度が左右されることはない、そんな状態になれるんです。SNSに広がる情報に溺れて情報迷子になることもなくなりますよ」

講座を受講したあるママは、とても印象的な感想を話してくださいました。このママさんは「今がとても充実していて、以前何に悩んでいたのかさえ思い出せないほど楽しい毎日を送れるようになった」とのこと。素晴らしい変化ですね。


インスタグラムでつながる全国のママたち

約1年半前からInstagramでの情報発信を始めたあやこ先生。地元の子育て支援活動だけに留まらず、より多くのママたちにサポートを届けるためにSNSを活用し始めました。

「地元の活動だと地元のお母さんにしか支援を届けられないなと思ったんです。でも今はInstagramという便利なツールがあるから、それを使えば地元のお母さんだけじゃなくて、全国のお母さんにもつながれるという思いが一番大きかったですね」

一つの投稿を作るのに平均2時間ほどかけるという丁寧な発信スタイル。すべての投稿を自分自身で作成し、ママたちからの質問や相談から得たアイデアや、自身が学んだ専門知識を惜しみなく共有しています。

「投稿するネタは、お母さんたちからよく質問をもらったり相談を受けることが多い内容を取り上げることもありますし、私自身も理学療法士さんや作業療法士さんの講座に参加して、いろいろな専門家から学んだ知識を投稿に反映させています」

特に反響が大きい投稿テーマ:


●抱っこの仕方について

●離乳食について


専門家の知識を分かりやすく伝えながらも、決して「これが正解」「これはNG」と決めつけない姿勢を大切にしています。


子どもは分身じゃない、隣で歩く存在

育児で特に大切にしてほしいポイントとして、あやこ先生が挙げるのは「一人の人として接すること」です。

「自分のお腹から出てきた子どもだから、心のどこかで『自分の分身・自分の所有物』という感覚を持ちながら子育てされているお母さんも一定数おられる印象です。もちろん感じ方は人それぞれなので、それを否定するつもりはありません。ただ、たとえ相手が赤ちゃんであったとしても『自分とは別の人格を持った、一人の人である』という意識も大切にできたらいいなと思っています。また、これまで出会ってきたお母さんたちを見ていると、わが子=自分の分身のような感覚を抱いているお母さんほど『真面目で頑張り屋さんすぎる』傾向にあるなと感じています。『自分の関わり方育て方次第で、この子の成長発達に影響が出てしまうかもしれない。少しも手が抜けない』と、わが子の人生全てをお母さん一人が背負ってしまっている印象です。」

あやこ先生は親子の関係性をこんな風に表現されます。

「お母さんが子どもを背中に背負って一つの道を歩くというよりは、お母さんと子どもは別々の道(別々の人生)を歩んでいる。でも何かあった時に『大丈夫よ』と言えるように、隣同士で手を繋いで歩いているイメージです」

この「隣で歩く」という考え方は、子どもを一人の人間として尊重しながらも、いつでもサポートできる距離感を大切にする素敵な子育て観ですね。


ありのままの自分を受け入れる子育て

あやこ先生からすべての子育て中のママたち、そしてこれから出産を迎える方へのメッセージです。

「何か困った時や『今ちょっときついよ、助けてほしい』と思った時に、すぐに声をかけられる存在を一人でいいから見つけておいてほしいです。それが自分の母であったり、きょうだい、友達、保育園の先生…誰でもいい。『母親なんだからこうあるべき』『こんなこと言ったら恥ずかしい』『こんなこと言ったらどう思われるだろう』…そんなの全部取っ払って、ありのままの自分をさらけ出して本音を言える存在を見つけてほしいですね」

あやこ先生が大切にしていること:


●絶対に否定しないこと

●ママの自己決定力が身につくよう支援すること

●今しかない今の尊さに目が向くよう関わること


あやこ先生はこれからも、地元でのベビーマッサージ教室やオンライン講座を続けながら、将来的には地元で子育て広場を開くという夢も持っています。

「子育て支援の世界全体がレベルアップして、お母さんたちにより良い支援が還元されていく環境が整えばいいなと思っています。自分が学んだ知識や経験は全部お母さんたちに還元していきたいですね」

あやこ先生の温かな支援の輪が、これからも多くのママたちの心に寄り添い、広がっていくことでしょう。



●教えてくれた専門家

  • あやこ先生さんayako.sensei
  • 500人以上の親子をサポートしてきた保育士。現在はInstagramで、育児・発達に関する正確な情報を発信中。組織の一員として届けられる支援に限界を感じて、「もっと踏み込んだ支援がしたい」と思ったことをきっかけに、2023年9月から情報発信をスタート。