
「人間の脳って、悪いことをすごく強くインプットするらしくて。だから意識して良かったこととか嬉しかったことを書き留めないと、悪い記憶で埋め尽くされちゃうんです」
そう語るのは、イラストレーター・刺繍作家として活動するありまさん(arimama_umauma)。2019年生まれの長女(6歳)と2024年生まれの次女(8ヶ月)の2人のお子さんを育てながら、Instagramで育児絵日記を発信し、書籍「うちの母は今日も大安」を出版するなど、多方面で活躍されています。
不安だらけの育児から始まった「幸せ探し」

ありまさんが育児絵日記を始めたのは、2018年、長女の妊娠7ヶ月頃のこと。きっかけは、人間の脳の仕組みを知ったことでした。
「生存本能的に、脳は悪いことを強くインプットするんです。穴に落ちたら『ここに穴があった』って記憶しないと、また落ちて死んじゃうかもしれないから。でも育児中って、今日泣き止まなかったとか、離乳食全然食べなかったとか、そういう悪い記憶ばかりになりがちで…」
長女の時は本当に小さなことでも不安の種でした。ゲップが出ない、鼻水が詰まる、そんなちょっとしたことでナースコールを押してしまうほど。医療系の情報を調べても「こうなると大変になる」という警告ばかりで、不安は増すばかりだったといいます。
そこで始めたのが、日々の小さな幸せや楽しいことを意識的に記録すること。「お花が綺麗だねって言ってくれた」「今日は笑ってくれた」そんな些細な瞬間を絵日記にして、Instagramで発信するようになりました。
フォロワーとの「ママ友トーク」が心の支え
「Instagramで育児絵日記を書いてる人にコメントする側だったんですけど、その交流がすごく楽しくて。自分も発信して、もっとお喋りができたらいいなって思ったんです」
実際に発信を始めると、フォロワーさんとの交流は想像以上に心の支えになりました。「私も私も」「今こんな感じです」といった共感のコメントは、まさに「ママ友トーク」のような安心感をもたらしてくれたそうです。
特に反響が大きかったのは出産レポート。詳細に描かれた長女の出産体験は「細かく書いてあるから心の準備ができました」「分娩台でも読んでいました」といった声が寄せられ、フォロワー数は3000〜4000人から一気に1万人まで増加。6年経った今でも、妊娠中の方に読まれ続けているそうです。
「自分の人生も大切に」書籍に込めた想い

2024年に出版された「うちの母は今日も大安」。この本には、ありまさんの「自分の人生を手放さないで生きていこう」という強いメッセージが込められています。
「育児中でも介護中でも、今大変なときがあっても、自分の人生を手放さないで生きていけたらいいよね。そんなお守りみたいな本になったらいいなと思って書きました」
本のテーマにもなっているお母様は、とてもパワフルな方。ありまさんがネガティブになった時も、いつも前向きな切り口で返してくれる存在だといいます。「母の影響で、小さいことを幸せとして集めていけば、案外人生楽しいなって思えるようになったんです」
読者からは「小さいことから一歩踏み出してみます」「好きだったものをもう一度探してみます」といった感想が寄せられ、大学生から70代まで幅広い層に愛読されています。
隙間時間でも続けられる「自分時間」の作り方
現在8ヶ月の次女を育てながらも、ありまさんは創作活動を続けています。その秘訣は「1日5分でもいいから、自分の好きなことをやる」こと。
「今は刺繍が好きなので、1日5分でもやるとか、好きなポッドキャストを聞いて『このお店いいな』とリストアップしておくとか。自分のことも大事にしながら育児をしたいなと思っているんです」
育児絵日記も、長女が小学校に行って次女がお昼寝している1時間や、子どもたちが早く寝た日の夜に少しずつ制作。一つの投稿を完成させるのに1週間ほどかかることもあるそうですが、それでも毎日少しずつ進めているそうです。
最近のリフレッシュ方法は、フィットボクシングとコーヒーゼリー、そしてベランダでのシソ栽培。「娘がベランダに行って『はい』って言って摘んできてくれるんです」と、日常の小さな幸せを大切にする姿勢は今も変わりません。
日々の小さなことを楽しんでもらいたい

最後に、妊娠中の方へのメッセージをお聞きしました。
「ずっと不安なこととかたくさんあると思うんですけど、大体のことは時が解決するんです。私も長女のときは、ゲップが出ないとかちっちゃいことでも全部不安になってたけど、今振り返ると全部1ヶ月2ヶ月後には解決してたり。だから、その不安も楽しみつつ、日々の小さいことも楽しんでもらえたらいいなって思います」
育児中でも自分の人生を諦めない。そんなありまさんの姿勢は、これから出産を迎える方、子育て中の方にとって、きっと大きな励みになるはずです。
●教えてくれたママ ありまさん(arimama_umauma )
イラストレーター・刺繍作家。2019年生まれの長女、2024年生まれの次女の母。Instagramで育児絵日記を発信し、書籍「うちの母は今日も大安」を出版。絵本や刺繍の本の出版、個展開催を今後の目標に活動を広げている。