2020年4月に児童虐待防止法が改正され、親が児童のしつけに際して体罰を加えてはならないことが明記されました。体罰はよくないとはわかりつつも手をあげてしまうかもしれない…今回はそんな不安をもつパパやママに知ってもらいたいことを記しました。
この記事の目次
- 体罰とは
- 体罰は時代とともに変化してきた
- 体罰してしまうかもしれない…と不安に思うのはふつうのこと
- 体罰のない子育てをするために知ってほしいことは「ひとりで子育てをしない」
- 体罰するかもしれないと不安になっていい!自分のSOSを見逃さないで
体罰とは
体罰とは暴力や肉体的苦痛によって私的に罰を科すこと。
例えば学校教育の現場だと、教師が生徒をげんこつで殴るや廊下で立たせるなどの長時間特定の姿勢を強いることも体罰と考えられています。
家庭教育の中だと、げんこつで殴るや、ものさしで背中をたたくといったことも体罰でしょう。
今まではしつけや教育の一環で、体罰が行われてきました。
昭和終盤から平成生まれの今の子育て世代のパパやママも体罰を受けてそだった人は多いはず。筆者も悪いことをした時など親に叩かれたことは何度もあります。
体罰は時代とともに変化してきた
祖父母世代の多くは、宿題を忘れたら廊下で立たされたり、家で暴れすぎたら柱にくくりつけられたり、食べ方が汚ければ、折檻されたりが当たり前の時代でした。
その話を聞き、自分が子供の頃を思い返すと、廊下で立たされるということはなく、教師が生徒を叩くということはなかったと思います。
先生が怒っているのを伝える方法として黒板を叩いたり、ボールペンを折ったり、ということはありました(今はそんなことをする教師はいらっしゃらないかもしれません)
時代とともに体罰がなくなっていくのは虐待防止だけではなく、子供に余計な傷を負わせない、暴力で解決させない、など子供の健全な教育につながるため、いいことです。
体罰をなくした後の親側へのフォローが分かりにくい
その一方で、体罰によって抑制されていたことが体罰をしないことで顕著になり、新たな問題にも繋がっています。
例えば、学校教育の現場では、体罰を科すことで受け持つ学級をコントロールしてきた教師は、体罰がなくなるとそれ以外のコントロール方法を持っていないため、生徒をどのようにコントロールしてよいかわからず学級崩壊に繋がるということになります。
教師によっては辞職する方や精神的に病んでしまう方もいるでしょう。
家庭ですと、今まで体罰を受けて育ってきた場合、反面教師として体罰をしない人もいますが、踏襲したくないのにしてしまう人や、体罰を受けてよかったと感じて踏襲する人もいるでしょう。
しかし、しつけとしての体罰が禁止となったときに「体罰をしない」ことを意識するあまり、育児ノイローゼやうつ、日常的な虐待ではなく突発的な犯行に及ぶこともありえるのではないでしょうか。
体罰をなくすことは子供にとってはいいことです。しかしその一方で親側へのフォローは非常に分かりづらいものになっていると筆者は感じています。
体罰してしまうかもしれない…と不安に思うのはふつうのこと
筆者個人の考えですが、「体罰してしまうかもしれない」と不安に思うパパやママは正常な考え方の親だと思っています。
「体罰なんかしない」という人はそのままでOK!ただし、「体罰をしてしまうかも…」と悩むママを「ありえない」「信じられない」と否定することや、攻撃することだけは控えてください。
たまにですが、悩んでいるママに「自分はきちんとやっている」アピールをしてマウントをとる人種がいるようです。
そういう方は、体罰はしないかもしれませんが、誰かに寄り添えるやさしい心や、多様化を認める広い心が欠落していていると感じます。
「体罰をしてしまうかも」はSOSのサイン!
体罰をしてしまうかもしれない、と不安に思うのはどうしてでしょうか。
筆者は「親自身に余裕がないからとっさに暴力や暴言として出てしまうのでは」ということだと思っています。
特に言葉が発せれない赤ちゃんを育児している間や、ワンオペ育児などでは本当に余裕がありません。精神的にも身体的にも疲労が重なり、育児ノイローゼになっている可能性もあります。
この場合は、まずは親自身が余裕のないギリギリの状態から脱することが先決です。
「体罰してはダメ」なんてことは体罰をしてしまうかもと不安になる人はわかっているのです。そのため、「体罰禁止」を声高に叫ぶことは何も解決にならないどころか、不安が募る親側をより窮地に追いやる一因となりうるのです。
体罰のない子育てをするために知ってほしいことは「ひとりで子育てをしない」
子供をもつ前はまさか自分が体罰をするかもと悩むなんて、と思わなかった方も多いかもしれません。それほどまでに、子育ては喜びとうれしさと同時に過酷さもあるのです。
これから子育てがはじまる、今子育てをしていて、自分の親としての振る舞いに心配はある、という人に知ってほしいことがあります。
それは「子育てをひとりでしない」ということ。
ワンオペ育児は確実に余裕がなくなります。パパとママふたりで育児をするのが望ましいですが、筆者の夫のように朝から晩まで働き、同じ家に住んでいるのに週1しか会えない、という夫婦もこの令和の時代にも実在します。ひとりで育児をしないために頼れる存在はどんどん頼りましょう。
祖父母
近くに祖父母(実両親・義両親)がいれば、応援を頼みましょう。子供がある程度成長したらしっかりとその時のお礼をすることが大切です。もしくは介護に積極的に携わるのもいいかもしれません。
遠くでも電話で話すだけでラクになることもあります。また定期的な帰省もしくは応援にきてもらうことで余裕を持つこともできるでしょう。
ママ友やパパ友・近所の知り合い
ちょっと子供を見てくれる人であったり、自分と違った価値観で見てくれる人や気軽に話せる大人の存在を持つことも大切です。
一時保育
親のリフレッシュにも一時保育は利用できます。一時保育が出来るのは保育園だけではありません。民間やNPO法人でも一時保育を受け付けている場合があります。
子供と一時的に離れることで、余裕を取り戻せるかもしれません。
ベビーシッター
預けに行くのが大変だという場合は、子供を見てくれる大人を家に呼ぶのがいいかもしれません。ベビーシッターさんの子供へのかかわり方を客観的にみることで、自分の育児に取り入れられるやり方もあるはずです。
保健師などへの相談
地域にいる保健師さんも育児相談に乗ってくれます。体罰するかもしれない、という不安を話に行け、ということではありません。もちろんありのままを聞いてほしい方はその不安を聞いてもらいましょう。漠然とした育児不安も一度でも相談することが大切です。
実際に筆者はひとり目が0歳の時、保健師さんに泣きついた経験があります。その後臨床心理士の方とのカウンセリングの時間も設けてくださりました。
児童相談所
児童相談所は子供だけが相談できるところではありません。親も相談できます。
子育てサークル・ワークショップ
地域団体が行っている子育てサークルやワークショップに参加すると、大人も子供も大勢いるので、少し気が休まるかもしれません。
子育て支援は親の希望通りにはいかないかもしれない
上記に挙げたひとりで子育てをしないための子育て支援は、完璧に自分の望みにかなうものはないかもしれません。
家から出たくないけれど、ベビーシッターさんに払う報酬が用意できない、だから実の両親に手伝いに来てほしいけど、まだ現役だし遠方で助けが呼べない…などと悩んでいるうちに余裕がどんどんなくなり、いきつく先は体罰をしてしまって落ち込んだり、自分の体調を崩したり、自分の精神が崩壊したりするかもしれません。
これらの場合は
・家を出る負担
・ベビーシッターに払う金銭面の負担
・両親に依頼するときの負担
の3つを考えた時、自分にとって一番負担の少なそうなものを選びましょう。
また、少人数のママ友とワイワイするのがいいのか、子供を一時保育に預けてゆっくりコーヒーを飲むのがいいのか、保健師などの専門家に的確な助言をもらうのがいいのか、というのはその人の個性や性格によって異なります。
いままでの自分に照らし合わせて自分自身がいいな、と思うものを選んでください。
それが、親にとっても子供にとっても一番の選択肢です。
親になると不安なことも多いですが、親が余裕を持つように努めることは子供にとっても、一緒に暮らす伴侶にとってもいいことです。
体罰するかもしれないと不安になっていい!自分のSOSを見逃さないで
不安になりやすい人は責任感の強い人なのかもしれません。だからどうか、「自分ひとりで何とかしなくては、だって親だから」と抱え込まず、ひとりじゃない子育てを目指してください。
目指した結果、誰かの心無い行動や一言で傷つくこともあるかもしれませんが、大切なのは体罰をしない環境づくりです。昔の子育ては参考にしつつも、これからの時代にそった自分も子供も愛せる育児をひろげていきたいですね。
(Photo by:写真AC)