「夜泣きは仕方ない…」「なんとかやり過ごすしかない」そう思っていませんか?


実は、適切な睡眠環境を整えることで、夜泣きは予防できるんです。今回は、睡眠環境を整えるための3つのポイントを、睡眠コンサルタントの三橋先生に詳しくお聞きしました。

夜泣き予防の第一歩は「安全な寝床づくり」から

夜泣き予防というと、寝かしつけ方や授乳のタイミングばかりに目が行きがちです。でも、その前にまず考えなければならないことがあります。それは赤ちゃんの命を守る「安全な寝床づくり」です。

残念ながら、日本では毎年、睡眠中の事故で尊い命が失われています。その多くは、大人にとっては何でもない「ちょっとした隙間」や、見た目を重視した「装飾的な寝具グッズ」(ベッドガード代わりのクッションや装飾用のヒモなど)が原因でした。赤ちゃんは自分で危険を察知したり、危ない状況から抜け出したりすることができません。

だからこそ、夜泣き対策の第一歩は、赤ちゃんが安全に眠れる環境を整えることから始まります。安全な寝床があってこそ、私たち大人も安心して赤ちゃんを見守ることができ、結果として夜泣き予防にもつながっていきます。

なぜ「同室別寝」が推奨されているの?

赤ちゃんの睡眠環境で最も重要なのは安全性です。特に生後1歳までの赤ちゃんは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが最も高い時期。世界的な研究から、このリスクを下げる効果的な方法の一つが「同室別寝」だということが分かっています。

同室別寝とは、パパママと同じ部屋で寝るものの、赤ちゃんは必ず別のベビーベッドやベビー布団で寝かせる方法です。パパママの気配を感じられる安心感がある一方で、添い寝による事故のリスクを防ぐことができます。

このような科学的根拠に基づき、2024年現在、こども家庭庁でも同室別寝を推奨しています。海外でも、アメリカ小児科学会(AAP)をはじめとする多くの専門機関が、赤ちゃんの安全な睡眠環境として同室別寝を推奨しています。

寝床づくりの重要ポイント

安全な寝床をつくるために、以下の点に気をつけましょう。

1. ベビーベッドと布団の隙間をなくす

- 指2本分(約3cm)以上の隙間があると危険

- 隙間が避けられない場合は、赤ちゃんが挟まらない程度に大きく空けた方が安全

2. 寝床には何も入れない

- おもちゃ

- ぬいぐるみ

- タオルケット

- 枕

- ベッドバンパー

実は2024年秋、こども家庭庁の乳幼児突然死症候群に関する啓発ポスターが大きく変更されました。それまでは赤ちゃんに布団をかけているイラストでしたが、現在は「寝床に何も入れない」状態を推奨するものに変更されています。

赤ちゃんの原因不明の突然死 「SIDS」の発症リスクを低くする3つのポイント

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201710/2.html

光・温度・湿度の3つで睡眠環境は激変する

① 光環境を整える

赤ちゃんの睡眠に大きく影響するのが光環境です。意外と見落としがちですが、以下のポイントを押さえるだけで、寝つきがグッと良くなります:

- 夜は完全な暗闇を心がける

- 豆電球は使わない(天井の豆電球は覚醒の原因に)

- 授乳や夜のお世話には足元ライトを使用(暖色系で薄暗いものを)

- 遮光カーテンで外光をしっかり遮断

特に注意したいのが「ちょっとした光」の影響です。エアコンのランプや加湿器の動作確認ランプなど、私たち大人が気にも留めない光でも、赤ちゃんにとっては大きな刺激になることも。敏感な赤ちゃんの場合、これだけで目が覚めてしまうことがあります。

② 温度管理のコツ

赤ちゃんと大人では体感温度が異なります。実は、大人が「少し肌寒いかな」と感じる温度が、赤ちゃんにとって心地よい温度なんです。

- 適温:20~22度

- (一定温度にするため)エアコンはつけっぱなしに

- 季節や住環境で調整

③ 湿度も重要なポイント

乾燥しすぎも湿度が高すぎも睡眠の質に影響します。快適な睡眠環境を作るための湿度管理のポイントは以下の通りです:

- 推奨湿度:40~60%を目安に

- 50%以上に保つことでウイルスが繁殖しにくい環境に

- 加湿器は赤ちゃんから適度な距離を取って設置


加湿器を使用する際の注意点として、実は加湿器の動作確認ランプも気を付けたいポイント。

小さな光でも赤ちゃんの睡眠を妨げる可能性があるため、可能であればランプにマスキングテープを貼るなどの工夫をしましょう。ただし、センサーなど重要な機能に影響が出ないよう、加湿器の仕様をよく確認してから対応することが大切です。

意外と効果的!音の活用方法

なぜ音が赤ちゃんの睡眠に効果的なの?

実は赤ちゃんは、お腹の中にいる時から様々な音を聞いて育っています。特にお母さんの心音や血流の音は、常に赤ちゃんの近くで聞こえる安心できる音でした。この経験が、生まれた後の音の効果に関係しています。

生後3ヶ月までの赤ちゃんの場合

この時期は、お腹の中の環境に近い「ホワイトノイズ」が特に効果的です:

- シャーッという砂嵐のような音

- 掃除機のような一定の音

- 心音に似た規則的な音

これらの音は、赤ちゃんに「まだお腹の中にいるような」安心感を与え、スムーズな入眠を促します。

4ヶ月以降の赤ちゃんの場合

成長に伴い、より自然な音が効果的になってきます:

- 滝の音

- 小川のせせらぎ

- 波の音

- 葉擦れの音 - 雨音

- 雨音のような連続した音

※これらの音はホワイトノイズとは少し異なりますが、リラックスや安心感をもたらす「自然音」として分類されます。

音の使い方の具体的なポイント

1. 音量設定 - 45~50デシベル程度(普通の会話程度の大きさ) - スピーカーは赤ちゃんの耳から2m程度離す - 突然の音量変化を避ける

2. 使用時間 - 寝かしつけ開始15分程度前から使用開始 - 深い眠りについてから30分程度は継続 - 次の起床まで一貫した環境を継続

3. 音源の選び方 - 音の途切れがないものを選ぶ - ループ再生できるものが便利 - 徐々に音量が変化するものは避ける

赤ちゃんの眠りのメカニズム

月齢によるお昼寝回数と睡眠時間の目安

赤ちゃんが機嫌よく過ごせる時間は月齢によって大きく変わります。この「覚醒時間」を知ることは、夜泣き予防の重要なポイントとなります。

※IPHI資料を基に作成しています。


例えば、生後4-6ヶ月の赤ちゃんは、1日の中で起きていられる時間は9~12時間。起きてから1時間半程度で眠くなり始めます。この時間を過ぎると、赤ちゃんは疲れているのに眠れない状態になりやすく、これが夜泣きの原因になることも。

赤ちゃんの眠りのサインを見逃さない

実は、赤ちゃんは眠くなると様々なサインを見せています。

- あくびをする

- 目をこする

- 視線が定まらなくなる

- ぐずぐずし始める

- 身体をよじる

- 耳を触る

これらのサインが出始めたら、それが赤ちゃんからの「眠いよ」というメッセージです。


眠りのサインが見えにくい場合も多いので、月齢別の適切な覚醒時間も目安に寝かせてあげてください。この段階で寝かしつけを始めることで、スムーズな入眠に繋がります。

よくある質問(Q&A)

Q1: エアコンをつけっぱなしにするのは赤ちゃんに良くないのでは?

A: 実は、温度が一定に保たれる方が赤ちゃんの快適な睡眠には適しています。エアコンを頻繁にON/OFFすることで起こる温度変化の方が、赤ちゃんの睡眠を妨げる原因となります。適切な温度(20-22度)に設定して、常時運転することをお勧めします。

エアコンの風が直接赤ちゃんに当たらないように注意し、風向きや風量の調整を行うことも重要です。

Q2: 遮光カーテンで朝まで真っ暗にすると、昼夜の区別がつかなくならない?

A: 昼夜の区別は、光だけでなく、活動や食事などの生活リズム全体で形成されます。夜の良質な睡眠を確保することの方が、赤ちゃんの健やかな発達には重要です。朝は決まった時間に起こし、カーテンを開けて朝日を浴びることで、自然と生活リズムは整っていきます。

Q3: 寝かしつけ時の音量は、常に45-50デシベルに保つ必要がある?

A: いいえ、これは目安の最大値です。赤ちゃんの様子を見ながら、心地よい音量に調整してください。また、徐々に音量を下げていっても構いません。大切なのは、急激な音の変化を避けることです。

Q3については、保つことは大切だと考えております。安心した環境=音量も含まれており、徐々に音量を下げることで、遮音効果も望めなくなってしまうかなと思っております。急激な音の変化はもちろんあると 覚醒や不安材料にはなりそうですね。

Q4: 冬場の寒い時期でも、赤ちゃんに布団をかけない方がいいの?

A: 寒さ対策は、スリーパーやベビー服で調整することをお勧めします。布団やタオルケットは、赤ちゃんの顔を覆ってしまうリスクがあるためです。室温を適切に保ち、赤ちゃん用の防寒着を活用することで、安全に温かく眠ることができます。

Q5: 兄弟がいる場合、同じ部屋で寝かせても大丈夫?

A: 基本的に問題ありません。ただし、以下の点に注意が必要です:

年上の子のおもちゃが赤ちゃんの寝床に入らないようにする それぞれの子どもの睡眠リズムを尊重する 互いの音や動きで睡眠が妨げられないよう、適度な距離を保つ

Q6: ベビーベッドのサイズはいつまで使える?

A: 一般的なベビーベッドは、赤ちゃんが自分で柵を乗り越えようとし始める(概ね1.5-2歳頃)まで使用できます。ただし、体重制限や高さ調節機能などは、製品によって異なりますので、使用説明書で確認することをお勧めします。

まとめ:夜泣き予防のための環境づくり3つのポイント

1. 安全な寝床づくり 同室別寝を心がける 寝床には何も入れない

2. 光・温度・湿度の管理 完全な暗闇を確保 温度20-22度、湿度50-60%を目安に

3. 音の活用 月齢に合わせた音の選択 適切な音量と距離の確保



夜泣きは決して「仕方のないもの」ではありません。環境を整えることで、予防や改善が可能です。まずは今日から、できるところから始めてみましょう。



●教えてくれた専門家

三橋かな先生 ( @kana_mitsu.nenne )

元アナウンサー。2人の子育て中に経験した夜泣きと産後うつを機に、乳幼児の睡眠分野を深く学び支援の道へ。2020年に国際資格IPHI妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント資格を取得。2021年からの4年間で2500人以上の相談実績を持ち、97%以上の改善率を達成。東京都墨田区・中野区、宮城県仙台市の出産カタログに主宰のサロンが掲載されている。Yahoo!ニュースエキスパート「寝かしつけ」の専門家としてコラムを執筆中。大阪総合保育大学での睡眠特別講義や都議会議事堂での講演実績を持つ。


ねんねブーケ

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