「この子、こんなに食べることが好きだったんだ」


3児のママであるちかさん(chika_blw )が、末っ子の娘さんの離乳食でBLW(赤ちゃん主導の離乳食)に切り替えたとき、一番印象に残っているのがこの瞬間でした。


それまでは従来のスプーンでお粥をあげていたちかさん。お皿に手を伸ばし、スプーンを触りたがり、体を前に乗り出す娘さんの様子が続いていました。


「自分で食べたいんだよね」


長男のその一言がきっかけで、翌日からBLWに切り替えたそうです。蒸したニンジンを目の前に置くと、娘さんの目の輝きと表情が、それまでとは全く違ったといいます。


「生き生きとした姿を見て、私も嬉しくて。上の子たちの離乳食では感じなかった喜びでした」とちかさんは振り返ります。


毎日のストック作りが本当に辛かった

ちかさんには12歳と10歳のお子さんがいます。2人ともお粥から始める従来型の離乳食で育ててきました。


「上の子たちの離乳食で一番辛かったのは、ストックを大量に作る時間でした。早く一緒のものを食べられるようになってほしい、とずっと思っていました」


でも、BLWに出会って気づいたのです。


「親と同じものが食べられるんだ。味付けをする前に取り分けるだけで十分だったんだって」


例えば肉じゃが。大人用を作るとき、ステンレスボウルで味付け前の食材を分けて一緒に煮込む。それだけで赤ちゃんの分も完成です。


「どれだけ食べたか」から「楽しんでいるか」へ

従来型の離乳食では、どうしても「どれだけ口に入ったか」に注目してしまいます。


「でもBLWは違いました。口元だけじゃなく、子どもの表情や体いっぱい使って食べている様子、食への向き合い方まで観察する余裕ができたんです」


赤ちゃんにとって「食べる」とは、咀嚼してゴックンするところまでとは限りません。食材を見て、触って、口に持っていく。そこまでで十分なのです。


「食べようとして食べなくても、自分で判断してやめたのならOK。親が落ち込む必要はないんです」


不安を解消する、具体的なアドバイス

BLWに興味があっても、不安で一歩を踏み出せないママは多いとちかさんは言います。


「窒息が心配」という声には、「海外の研究では、BLWだから窒息しやすいわけではないことが分かっています。目を離さない、姿勢を崩さないといった基本的な注意点は従来型でも同じです」と答えます。


「味付けをどうしたらいいか」という質問には、「蒸し野菜に固執しすぎなくて大丈夫。出汁で煮る、お塩をパラパラかける、バターで焼く。親のご飯から取り分ける視点を持つと、悩みも減ります」とアドバイス。


アレルギー食材も、基本は従来型と同じ。最初は赤ちゃんが一口食べたら残りを回収してコントロールする方法や、不安な場合は卵・乳・小麦だけスプーンを使う方法もあります。


「ママがストレスない方法を選ぶのが一番です」


BLWは「選択肢の一つ」

ちかさんが活動を通して一番大切にしているのは、こんな信念です。


「BLWが全員にとって正義ではないんです。合う合わないもあるし、ママの価値観も、お子さんのキャラクターも、みんなそれぞれ違います」


家庭の数だけ、食卓の理想がある。だからこそ柔軟な支援が必要。


「選択肢の一つとしてBLWを知ってもらいたい。従来型でも補完食でもいい。BLWの考えだけでも頭の片隅にあれば、離乳食を楽しく過ごせると思うんです」


お粥はスプーンであげて、手づかみしやすい野菜はBLW形式で。そんなハイブリッドな進め方もあります。


親子で楽しむ大切な時間

最後に、ちかさんから離乳食に取り組むママ・パパへのメッセージをいただきました。


「離乳食は、お母さんが課題を背負うようなものではないんです。赤ちゃんの気持ちを大事にしながら、ママもご飯の時間を楽しんでほしい。マニュアルに囚われず、家族で豊かな時間を過ごしてほしいなと思います」


ちかさんは今後、取り分けの工程に特化したレシピアカウントも始める予定です。


「赤ちゃんのことが大事だからこそ、同じくらいお母さんが自分のことも大事にしてほしい」


赤ちゃんを見守るお母さんを、支えたい。ちかさんの温かい想いが、今日も多くのママたちに届いています。



●教えてくれた専門家 ちかさん(chika_blw
子ども摂食アドバイザーの資格を持つ3児の母。上2人の子どもを従来型の離乳食で育てる中で、ストック作りの負担を実感。3人目の離乳食でBLW(Baby-Led Weaning)に出会い、子どもの生き生きとした姿に衝撃を受ける。2022年末から情報発信を開始し、現在はBLW講座やオンラインサポートを提供。「BLWは選択肢の一つ」という信念のもと、一人ひとりの家庭に合わせた柔軟な支援を心がけている。