「高齢」という言葉を聞くと、70代ぐらいのイメージでしょうか。しかし出産については35歳から「高齢(高年)」。今回は年々増加している高齢出産についてまとめてみました。


この記事の目次

出産時のママの年齢が35歳以上だと高齢出産


「高齢出産」とは35歳以上で出産すること。妊娠出産は、年齢によって母体や胎児かかる負担やリスクの度合いが変わってきます。35歳頃からそのリスクが高くなる傾向があり、年齢が上がれば上がるほど負担やリスクはより高くなると考えられています。

 

1991年ごろから30歳→35歳に引き上げ

高齢出産は以前は30歳以上の事を指していました。しかし、30歳以上の出産が増えてきたことや、医療技術の発展などから、1991年ごろから高齢出産は35歳以上の初産婦を指すようになったのです。なお、経産婦の場合は40歳以上での妊娠出産が高齢出産となるようです。


今や3人に1人が第一子は30代で出産

1975年の初産時に30代以上だったママはその年に出産したうちの10パーセントにも満たない数でした。


それが1990年には全体の20%ほどが30代以上になり、2003年には35%以上とおよそ3人に1人が30代での初産となっています。


高齢化する日本の出産


日本の出産は年々高齢化しています。その理由としては、進学率の上昇や、不景気による子育てに対する不安、選択の自由などさまざまなことがあげられますが、晩婚化が出産の高齢化に繋がっていることは一目瞭然です。


2017年の平均初婚年齢は男性31.1歳・女性は29.4歳でした。結婚するのが29歳であれば、授かり婚などのケースを除けば、出産は30代になることは想像に難くありません。実際、2017年の第一子、平均出生時年齢は30.7歳でした。


1990年の女性の初婚年齢25.9歳・第一子が27.0歳高齢出産の年齢の引き上げがされたころの日本の女性と比べると、初婚年齢は3.5歳、第一子の出産年齢は3.7歳上昇しています。

 

高齢出産に伴うリスク4つ


年々増加傾向にある高齢出産。人生100年時代と言われている子育て世代においては、出産が30代になってもさほど影響がないように見えます。しかし、妊娠出産は先述の通り加齢によってさまざまな負担やリスクが大きくなるのです。


流産のリスクが上がる

流産とは、妊娠22週未満で胎児が外に出てしまうこと。流産の原因はほとんどは胎児側の問題ですが、年齢によって流産率も変化します。


20代~30代前半では15%程度ですが、35歳で20%、40歳では35%と少しずつ上昇し、45歳になると60%の妊娠が流産となると考えられています。


胎児の染色体異常

高齢になると胎児の染色体異常も起きやすくなります。そして染色体異常の多くは流産になるのです。


染色体は23対あり、父親から1本、母親から1本、それぞれ2本が対になり、46本の染色体で構成されます。その染色体が欠けたり多かったりするのが染色体異常です。


21番目の染色体が3本あるダウン症(21トミソリー)は染色体異常のひとつ。このダウン症も20代であれば1000~700人に1人の確率ですが、35歳頃だと300人に1人程度で以降年齢が上がるにつれ確率も上がっていきます。45歳頃の出産ですとおよそ20人に1人の確率でダウン症になると考えられています。


前置胎盤などの妊娠合併症

流産や胎児の以上だけではなく、母体側の前置胎盤や妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症のリスクもあがります。また妊娠前の病気のリスクも年齢が高いでしょう。


体力低下に伴うお産や産後のトラブル

一般的に年齢とともに体力は低下しやすいため、出産が長引くことなどが懸念されます。また、出産だけでなく産後の肥立ちにも影響する場合も。


体力については、個人差が大きいものですので、妊娠前から体力づくりを心掛けるようにしましょう。


高齢出産は人生経験が豊富なのがメリット!落ち着いた育児ができるかも?!


高齢出産のリスクはたくさんあるものの、メリットもあります。


人生経験が豊富なのがメリット

20代の時と30代の時ならものの見方や考え方に変化があることを実感するでしょう。体力は低下した分、経験でカバーできることも多くあります。経験値が育児にも冷静さや落ち着きを与えてくれるかもしれません。


貯金など金銭面の余裕がある

20代に比べて30代、40代の方が貯金がある程度の額あったり、収入面でも安定しているでしょう。妊娠出産、そして産後の育児の頃は状況によっては大幅な減収があったり、育児にかかる費用がかさむことで家計に影響があるかもしれません。貯金があるとその分、心の余裕が生まれます。


平均寿命から考えれば30代40代での出産だからこその育児・人生を楽しめるかも

2050年には女性の平均寿命は90歳を超えるようになると推測されています。つまり、2020年代に30代後半、40代でママになる人たちは30年後は60代半ばから70代。第一子もひとり立ちをしていることも多いでしょう。


20代の体力があるときに自分の時間を楽しみ、経験を積んで大変ながらもなんとか30代から50代は育児をしてまた70代からは老後を楽しめるかもしれません。


ママに聞いてみた!年齢による妊娠後期の症状


ママびよりの調査で、妊娠後期の体調のトラブルについて調べたところ、年齢差によって以下の傾向があることがわかりました。


むくみは20代で妊娠するより増加傾向

妊娠後期のトラブルとしてよくある「むくみ」。20代では35.9%の妊婦にそのトラブルがありました。35歳以上ですと、51.9%と2人に1人はむくみに悩まされていたようです。


妊娠糖尿病も高齢出産の方がリスクが上がるかもしれない

妊娠合併症のリスクである妊娠糖尿病についても、リスクが上がると考えられている通り、アンケートでも35歳以上の妊婦のパーセンテージが高くなりました。


妊娠糖尿病になった妊婦20代…2.6% 35歳以上…7.4%


腰痛は若い子の方が感じやすい?

一方で、35歳以上より20代の方が多かった妊娠中のトラブルが「腰痛」でした。20代では60%の妊婦が腰痛を感じたそうですが、35歳以上ですとなんと22.2%!


これは筆者の推測なのですが、30代40代になると妊娠時以外にも腰痛を感じやすいため、妊娠中の腰痛は妊娠が原因ではない、と思っているのではないか、経験が痛みを感じにくくさせているのではないかと思っています。


貧血や尿もれのトラブルについては、年齢による大きな差は今回の調査ではみられませんでした。


高齢出産ママからのメッセージ


高齢出産をしたママたちからのメッセージを抜粋しました。


「むくみで、悩んでいる方、出産後はもとに戻るので、今の辛抱です、頑張ってください。」

 30代後半 専業主婦


「とにかく一人で動けるうちに、友達とカフェやレストランに行ったり、ショッピングした方がいい!全く行けなくなります。妊娠高血圧にはなりましたが、動き回っていたお陰か、超安産でした!」

30代後半 専業主婦


妊娠中にトラブルに見舞われつつも、冷静に乗り切られている印象ですね。

高齢出産だとまわりに出産経験のある知り合いも多いかもしれません。身近な人から経験談が聞けるのも落ち着いて出産に向き合える秘訣、メリットかもしれません。


高齢出産のリスクを知ることで予防ができる!


高齢出産にかかわらずですが、妊娠出産は何が起こるかわからないため、不安はつきものです。とはいえ、何も知らないで不安だけが募るのはリスク軽減や回避には不向き。リスクをきちんと知り、予防できるリスクと出来ないリスクを理解して、無理なくあなたらしいマタニティライフを過ごしてくださいね。 


【参考文献】

内閣府「平成16年版 少子化社会白書(全体版) 第3節 出生の動向の特徴」

内閣府「 令和元年版 少子化社会対策白書(全体版)  第1部 少子化対策の現状(第1章 3)」

厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」

「HUMAN+ Baby+ お医者さんがつくった妊娠・出産の本 第三版」

 出版:株式会社リクルートホールディングス監修:公益社団法人 日本産科婦人科学会


【調査概要】

期間: 2017年8月29日~9月1日

方法: カラダノ―トママびより調査

対象: 妊娠・育児中のメルマガユーザー(N=136)


(Photo by:写真AC