「里帰り出産」とは、出産の際に自宅ではなく実家付近の産院で出産すること。実家が遠方にあるなどの理由から、産前産後のケアが自宅では不十分な方が選択する出産方法です。


しかし、近年は里帰り出産をおすすめしないケースも増えてきています。

何故なら産前産後に必要な医療支援や身内からのサポートが、得られない場合があるためです。


また、自分のライフスタイルや習慣が変わったりする可能性・その変化に伴うストレスの増加といったことがあげられます。さらに両親がまだ働いている場合、仕事と家庭のバランスをとるのが困難になる可能性もあるのです。


「出産したら里帰り出産」と思い込んでいた筆者が、里帰り出産でサポートが得られず苦しんだ実際のエピソードを交えて解説します。


この記事の目次


里帰り出産をおすすめしない5つの理由


里帰り出産をオススメしない理由は5つあります。


①医療支援の不足

②ストレス

③環境の変化

④医師とのコミュニケーション不足

⑤家族サポート不足

①医療支援の不足

自宅が都市部、実家が郊外や地方といった場合、産婦人科が実家近くにないことがあります。

その場合、緊急時の医療サービスを受けられないリスクがあります。


■不足例

 陣痛タクシーがない、出産できる産院が少ない、もしくは実家から遠い、マタニティケアが受けられない、産後ケア支援が不足しているなど


②ストレス

夫以外の家族と一緒に暮らすことで、ストレスや緊張感が増加する可能性があります。

ママ自身が子どもの時に両親と過ごすことにストレスがあった場合、その傾向は強くなるでしょう。


そうでなくとも、実家から出てからの年月が長いほど、ズレが生じやすくストレスを感じやすい傾向があります。


③環境の変化

自宅と違うため、自分のライフスタイルや習慣が変わることで快適な環境を得ることが難しくなります。


特に実家と自宅の生活のギャップ(コンビニが徒歩圏内にない、両親の就寝時間が早いためリビングでテレビを見ることができないなど)が大きければ大きいほど、変化の幅も大きくなります。


また、上の子がいる場合、保育園や幼稚園を数ヶ月間おやすみをすると、継続利用ができなくなることがほとんどです。出産後も通園希望であれば里帰り出産はおすすめできません。


④医師とのコミュニケーション不足

医師とのコミュニケーションが難しくなる可能性があります。


妊娠後期になってから里帰り先の出産予定の産婦人科に通院するため、出産前の妊婦健診は数回のみ。


そうすると妊娠初期~中期の妊娠の経過や変化を把握しきれないことがあるため、医師の認識や観察の不足が生じる可能性は増します。


⑤家族サポート不足

里帰り出産の目的のひとつでもある産前産後の家族サポートを十分に受けることができないケースがあります。


何故なら、実家でサポートをしてくれる両親(産まれてくる子の祖父母)も退職年齢の延長に伴い、現役で働きに出ているため、里帰り出産し退院後も実家でワンオペの時間が増えることになるからです。


また、自宅で過ごすパパとなった夫とも物理的な距離があるため、パパからのサポートも得にくくなります。


筆者は里帰り出産をしたのですが、上記に当てはまることがいくつか感じました。


第一子の里帰り出産でボロボロになり生後1ヶ月すぐに自宅へ


筆者は漠然と里帰り出産をするものだと思っていたのですが、第一子の里帰り出産で『こんなはずではなかった』と、痛感しました。


子どもが長距離移動できるようになったタイミング、つまり生後1ヶ月健診を受け(再診になったので再診後)すぐに新幹線に乗って、東京にある自宅へと帰宅しました。


私がすぐに自宅から帰った理由「環境の変化」「両親のサポート不足」

里帰り出産で後悔したのが環境の変化。


都内の23区内に住んでいた筆者は、妊娠後期になってもお買い物や仕事など気軽に出歩いていたのですが、実家は車がなければ移動できない郊外です。

徒歩圏のお出かけができないので車を運転しようとしたのですが、妊婦だからと車の運転も禁止されてしまい、お出かけができない状態にとてもストレスが溜まったのです。


また、両親がフルタイムで働いているため、出産後も両親から十分なサポートを受けることができませんでした。

さらに両親の就寝時間が22:00と早いため、夜間授乳のたびに両親を起こしてしまわないかひやひやしたのを覚えています。


実家の2階の部屋(元自分の部屋)を借りていたのですが、夜のトイレや夜間授乳(混合育児)のたびに階段昇降をするのが産後の身体のつらさと睡眠不足ののつらさでキツかったです。


両親がいない週末に「自宅に帰ろう」と決心

筆者が妊娠後期に入ったころ、実弟の結婚が決まりました。諸々の都合があったため、出産から10日後の週末に両家の顔合わせをすることになったのです。


出産して退院後、実家にお世話になっていたのですが、フルタイムの仕事に加え、実弟の結納準備にいそしむ両親。


そうなると、無事に出産したからなのか産後は放置気味になり、顔合わせの日の週末は実家に母子2人で残され、終日二人ですごすわけです。


その後、急激に体調を崩し38℃を超える発熱。


産褥期に母子2人でいることの恐ろしさを体感した瞬間でした。


自宅でも平日は夫もフルタイムで不在です。しかし、休日は妻と子のために時間を割くはず。

そして、父子のふれ合いもできる。


産後1ヶ月健診が終われば、すぐ帰ろう、と決心したのでした。


しかし、筆者は上記のようにゆっくりと心と身体を回付できなかったためか産後の肥立ちが悪く、さらに子どもの成長も芳しくなく、双方ともに再診になったのです。


産褥期の無理はダイレクトに影響することを実感しました。


里帰り出産をしないときに確認しておきたい6つのこと


里帰り出産を選択しない場合、出産に際して6つのことを確認しておきましょう。


①夫の準備

②陣痛タクシー

③家族、親戚による産後サポート

④産後ケア施設

⑤家事代行

⑥ベビーシッター


①夫の準備

里帰りをせずに出産するということは、産前産後の家事育児も夫が担うことになります。


・産休、育休の取得が可能か?

・休暇取得期間はどれくらいか?

・産後のママの身体についての知識

・新生児のお世話に関する知識(沐浴・授乳・オムツ・睡眠サイクルなど)

・食事の準備など家事全般


これらを夫が主体的に行うことが重要ですので、夫側の準備が必要になります。


②陣痛タクシー

自宅で産前産後を過ごす場合、産気づいた際にひとりで向かうのは困難です。

陣痛タクシーに登録しておきましょう。


③家族、親戚による産後サポート

夫に準備してもらい、サポートをしてもらいます。

それ以外にも、実家から両親に支援にきてもらえないか確認しておきましょう。

里帰りは困るけど、産後の1~2週間なら、仕事を休んで駆けつけてくれるケースもあります。

実際、筆者の弟夫婦がそのケースでした。


④産後ケア施設

夫や両親などのサポートが受けられにくい状況の人は、産後ケア施設を利用しましょう。

助産院や産婦人科でも産後ケア入院対応をしている施設がありますので確認してください。


最近では産後ケアホテルといった施設もできています。

また、自治体でも宿泊型の産後ケア事業に取り組んでいますので、お住いの自治体に確認してみてください。


 

⑤家事代行

産後は身体の回復が最優先。家事を始めることも難しいですし、回復してからもまた慣れない育児で家事まで手が回らないことがあります。


産後の家事は家事代行を活用することで、ママの身体を休ませることを優先できます。



⑥ベビーシッター

身内以外にも自宅でサポートできる人はいます。家事なら先ほどの家事代行、赤ちゃんのお世話のサポートであればベビーシッターです。



産後はママひとりで乗り越えようとするのは危険です。特に産褥期、とりわけ産後21日~28日後の「床上げ」までの間は、ママの身体の回復最優先の時期です。


筆者は無理をして本当にしんどかったです。

30℃を超す残暑厳しい季節に毛布にくるまらないと身体が凍えそうに寒くなるほどホルモンバランスの乱れが起こるとは思いもしませんでした。


そして産褥期だけではありません。妊娠出産の影響は、産後最大1年ほど続くと言われています。筆者も産後半年ほど尿漏れがなおりませんでした。


ひとりでも多くのママが、産後に無理のない選択をしてほしいと心から思っています。


里帰り出産がベストなわけではない!ママ自身の状況に合わせて臨機応変な選択をしよう!


妊娠がわかると、実家が遠距離であるほど考えるのが「里帰り出産をするか否か」ではないでしょうか。

筆者は漠然と「里帰り出産するもの」と思って出産をした結果、想像とは違った産前産後の生活となりました。


里帰り出産には以下の側面があります。


①医療支援の不足

②ストレス

③環境の変化

④医師とのコミュニケーション不足

⑤家族サポート不足


しかし、ママの状況はひとりひとり違います。

実家の両親、もしくは両親のどちらかが就労しておらず、家庭での支援が受けやすい状況であったり、自宅よりも実家の方が医療支援が多い場合もあります。


大切なのは「誰もが里帰り出産がベストではないし、里帰り主産しないことがベストでもない」ということです。


繰り返しますが、置かれてる状況が違えばベストは変わります。


命をかけて産むのはママです。

政府統計によると医療技術が進歩した今でも100人に3人は死産となっています。

参考:「人口動態調査 人口動態統計 確定数 周産期 」(政府統計の総合窓口(e-Stat))


また10人に1人が産後うつになるくらい、産後のママには様々な負担があるのです。


夫婦で話し合いながら、ママの状況に合わせた選択をしましょう。